「マイナスイオンは体に良い」「トルマリンはマイナスイオンを発生させて健康に良い」といった言葉を、パワーストーンに関する本やウェブサイトで見かけることがあります。
でもこの「マイナスイオン」という言葉には、科学的な根拠が無く。誤解を招きやすい言葉です。
今回は、この「マイナスイオン」についてニセ科学ではなく。化学の視点から詳しく解説。パワーストーンの本当の魅力について紹介しますう。
マイナスイオンは嘘。専門用語ではない
業界ぐるみの嘘だったマイナスイオン
今、マイナスイオンを「健康にいい」と言って宣伝に使うと、法律違反になります。
マイナスイオンの存在が科学的に確認できてませんし、マイナスイオンが健康にいいという具体的な医学的なデータがないからです。
2000年前後に多くの家電メーカーがマイナスイオンを発生させると称する製品を発売しました。でも今は殆どありません。 景品表示法が改正され、商品の表示に合理的な理由がなと発売できなくなったからです。
サイエンス(科学)の世界にマイナスイオンはない
実は化学の世界には「マイナスイオン」はありません。僕は化学を勉強して企業の研究者として働いていました。日本の化学者の集まる学会「日本化学会」の会誌にも「マイナスイオンは専門用語ではない」と書いてます。
でも表現の自由が保障されているので「マイナスイオン」という言葉を使うの法律違反ではありません。
一度広まったものは簡単には消えませんし、パワーストーン業界にはマイナスイオンを担ぎ出す風潮が残っているのです。
確かにパワーストーンの持つ力は現代科学では説明できません。科学というよりは精神世界の話になってしまいます。科学で証明できないものに価値はないとは思いません。
人は心の生き物ですから説明のつかないものでも癒やしや心に様々な影響を受けることがあるからです。
だからといってありもしないのに科学的に証明されていると説明するのは問題があると思います。
イオンとは何ですか?
ここでイオンとは何かについて説明しておきます。
化学用語としてのイオン
化学の世界では、原子が電子を失ったり獲得したりすることで、電気的に中性ではなくなった状態を「イオン」と呼びます。
- 陽イオン: 電子を失い、正の電気を帯びたイオンです。
- 陰イオン: 電子を獲得し、負の電気を帯びたイオンです。
例えば、塩化ナトリウム(食塩)が水に溶けると、ナトリウム原子は電子を1つ失ってナトリウムイオン(Na+)となり、塩素原子は電子を1つ獲得して塩化物イオン(Cl-)になります。これらのイオンが水中に存在することで、塩水は電気を通す性質を持ちます。
空気(大気)イオン
一方、大気電気学では大気中に存在する電気的に帯電した原子や分子を「空気イオン」「大気イオン」と呼びます。
- 大気正イオン: 正の電気を帯びた空気イオンです。
- 大気負イオン: 負の電気を帯びた空気イオンです。
大気中の空気イオンは、宇宙線や放射性物質からの放射線、雷放電などによって生成されます。
これらのイオンは非常に不安定。空気中の水蒸気や塵などにすぐに付着して消滅してしまうため、大気中での寿命は非常に短いです。数秒も存在できないのが特徴です。
確かに自然界には大気イオンがある
自然界では落雷によって一時的に大気イオンが発生します。
湿気の多いところでは大気イオンは長持ちしますが、乾燥したところでは大気イオンは直に消滅します。ホコリのような微粒子があると、大気イオンは壊れてしまいます。
残念ながら↑が気持いいのはマイナスイオンの効果ではありません。
でも、注意してください。
大気負イオンがホコリを少なくしているのではない。
大気負イオンが空気をきれいにしているわけではないのです。
というだけの話です。
大気イオンは清流の鮎と同じ
つまり、大気イオンは清流で暮らす鮎と同じです。
違います。鮎が死ぬだけです。
メーカーの都合で大気イオンをマイナスイオンにした
さきほどマイナスイオンは存在しないと書きましたが。今は権威とお金さえあれば嘘でも本当にできる時代。
現在では大気イオンをマイナスイオンの正体として説明している企業や研究者がいます。
メーカーと癒着して利益を得ている大学の教授や研究者が大気イオンをマイナスイオンと呼んでいるせいで、まるで科学的にマイナスイオンの存在が証明されたかのように言われることもあります。
でも
景品表示法ができてから、慌てて取ってつけた説明なんです。
メーカーの説明ではいつの間にかマイナスイオンの他にもプラスイオンも発生させることになっている製品もあります。
プラスイオンは体に悪いって言ってましたよね?
大企業の中にはマイナスイオンという言葉は使わずに別の言葉で説明しているものもあります。
「イオン○○○」とか「ナノ○ー」とか「プラズマ○ラスター」とか。
これらはただの大気イオン発生装置です。
イオンに善玉、悪玉はない
陰イオンや大気負イオンが健康に良くて、陽イオンや大気正イオンが健康に悪い。とは単純には決められません。単なる化学的な性質の違いです。
善悪をはっきりさせて説明すると消費者を騙しやすいのでそう言ってるだけですよ。
マイナスイオンは活性酸素?!
健康問題に詳しい方なら「活性酸素」というものを聞いた事があると思います。
遺伝子を傷つけたり、老化の原因として考えられている物質ですね。
活性酸素は陰イオンの仲間。
活性酸素は反応性が高く、有機物を分解することが出来ます。
大気イオン発生装置に消臭効果やウイルスを殺す効果があるというのが本当なら、こちらの効果でしょう。原理的には可能です。
ただし、家の中の全てのウィルスを殺すほどの大気イオンを出したらどんな影響が出るのか、僕にはなんともいえません。
水の処理にも使われるオゾン
広い意味で活性酸素の仲間といわれるオゾン(O3)を使えば水の浄化ができます。オゾンにも有機物を分
解する力があるからです。僕のいた学校でもそんな研究をしている先生がいました。僕の出身校とはまったく関係ないですが、東京都の水道局ではオゾンの水処理が採用されています。
もちろん、家庭に水が行くころにはオゾンの量は減っているので人体に害はないはずです。オゾンには焦げ臭いような臭いがあるのであれば分かります。
というわけで。
仮に大気イオンや陰イオンがマイナスイオンの正体だったとしても、マイナスイオンだから健康にいいとはいえないのです。
大量の活性酸素があったらどうなるのでしょうか?
健康問題に敏感なあなたならもう分かりますね。
マイナスイオンの正体が陰イオンだったら、むしろ体に悪いかもしれないのです。
マイナスイオンと健康
「マイナスイオン」という言葉は、行政の指導を受けたので現在ではメーカーやメーカーと癒着した研究者の都合で大気負イオンを意味する言葉として使ってることは紹介しました。
でも科学の専門用語としては間違っています。
仮に大気イオンが出てるとしても科学的な根拠に基づいて健康効果が証明されているわけではありません。マイナスイオンが健康に良いという説はデマ、フェイクニュースです。
- 科学的根拠の不足: マイナスイオンが人体にどのような影響を与えるか、具体的なメカニズムや効果については、まだ解明されていない部分が多く、科学的な根拠が不足しています。
- 過剰な期待: マイナスイオン発生器などの製品が、あたかも万能薬のように宣伝されることがありますが、これらはあくまで民間療法であり、医療行為ではありません
トルマリンの健康効果は?
パワーストーンとマイナスイオン
パワーストーンの中にはトルマリンのように圧力や熱を加えることで電気を発生させるものがあります。
トルマリンは電気石の名前のとおり熱や圧力を加えると電気を発生します。
そのせいでトルマリンはマイナスイオンを発生させるという人もいます。
でも先程も言ったように大気イオンがマイナスイオンだったとしても。そんな微弱な電気で発生する大気イオンはごく僅かです。
なのでトルマリンやパワーストーンのマイナスイオンは以下の点に注意が必要です。
- 発生量の少なさ: 手のひらサイズの石から発生する大気イオンの量はごく微量です。人体に影響を与えるほどの量ではありません。
- 一時的な現象: 大気イオンの発生は石に圧力や熱を加えたときの一時的な現象。常に発生しているわけではありません。
- 他の要因: パワーストーンの効果はイオンだけでなく、その石の色や形、心のつながりなど様々な要素が複合的に作用していると考えられます。
パワーストーンの本当の魅力
パワーストーンは科学的な効果ではなく人の心や精神に働きかけるものです。
- 心の癒し: パワーストーンを身につけることで、心の安らぎや癒しを感じたり、自己肯定感を高めるために使います。
- 目標達成: パワーストーンに願いを込めて身につけ、目標達成に向けて励ます効果もあると言われます。
- コミュニケーションの円滑化: 人とのコミュニケーションを円滑にする、心のバランスを整えるために使います。
マイナスイオン=体にいいはウソ
石の説明をするときにマイナスイオンを出すから体にいいと言ってる人は、パワーストーンの事を理解できていないと思ったほうがいいです。
それなら石の霊が守ってくれますと言ってくれたほうがまだマシです。
霊は「信じる信じない」の世界なので科学で説明できるものではないからです。
僕は化学を専攻し、科学の知識も身につけましたがパワーストーンも大好きです。精神的な安らぎや心を豊かにしてくれるアイテムとして意味があると思います。
でも嘘の説明で科学的根拠があるように言いふらすのは間違ってると思います。
もう一度言いますが、マイナスイオンが体にいいというのは嘘なのです。
以上たかふみでした。
コメント
はじめまして
記事をいろいろと読ませていただきました。
パワーストーンを扱っている方で、こんなに素晴らしいバランス感覚をお持ちの方は珍しいと感銘を受けてしまいました。
どちらかというとスピリチュアルに偏る傾向にあるこの世界ですので、科学的な目でもご説明なさっている事が素晴らしいと思いました。実はちょうど私も石を扱う小さな仕事の立ち上げを考えているところで、いろいろと勉強しているところです。基本的には科学的に説明のつかないことはあまりしたくないと思っています。ですが、私もパワーストーンといわれるものが嫌いでは決してありません。なので、私の中の疑問に思うことがたくさんある中、本当に相談にのっていただきたいくらいです。そのような機会がありましたら、よろしくお願いします。
海野さん、こんにちは。ありがとうございます。たしかにこの世界はバランスが難しいと思います。不思議なものにあこがれる気持ちは大切にしたいし、かといって科学的にまちがったことは広めたくないという想いで書いてます。石に関係するお仕事、頑張ってくださいね。実は僕も石関係の仕事をするため勉強中です。こういうサイトの管理人でよければご意見はいつでもどうぞ。
ありがとうございます。
ご相談等は、こちらからのみでしょうか?
公開されないアドレス等がありましたら、教えていただけるとうれしいです。
海野さん、こんにちは。アドレスはプロフィールに載せましたが目立たないところに書いてるので気が付いてもらえないかもしれませんね。後程連絡いたします。