水晶の中に線状の内包物(インクルージョン)があるもの。これをルチルと呼んでいますね。
針状のものが入っていたらなんでもルチルだと思っていませんか?
でも、その考えは間違っています。
ルチルとは線状の内包物を意味する言葉ではありません。
ルチル(rutile)の日本語名は(金紅石)。
鉱物の名前なのです。
ルチルのおもな成分は酸化チタン。
「酸化チタン」には、結晶の違いでアナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型という種類があります。
つまり、
「ルチル」というのは「ルチル型の酸化チタン」を意味する名前だったのです。
だから最初はルチルの線状結晶の入った水晶のことを。「ルチル入り水晶」と呼んでいました。
ルチルレイテッド クォーツ(lutilelated quartz)ともいいます。
似た言葉に「針入り水晶」があります。「針入り水晶」とは線状の内包物が入った水晶のことです。針の成分は何でもいいです。
でも、なぜかパワーストーンの世界では。
「ルチル」=「針入り水晶」になってしまいました。
悪意のある業者や無知な業者によってすり替えられてしまったのです。
そして今ではルチルのバリエーションが増えています。
混乱状態の「ルチル」の世界を見てみましょう。
ルチルの仲間達
王道の金のルチル
ルチルというと金色が有名です。
人間は金が大好きです。金色の物は価値を高く評価します。
だから、金色に見えるルチルレイテッドクォーツは人気があります。きれいなものは数が少ないのでとても高価です。金色に見えるからといって「金」ではありません。成分は酸化チタンです。
本来のレッドルチル・ブラックルチル
ルチルには赤茶色もあります。 黒っぽく見えるものや赤っぽく見えるものがあります。
鉱物鑑定検定を主催する益富地学会館が編集した鉱物鑑定図鑑には、ルチルの色についてこう書かれています。
鉄分の含有量が増えるに従って、黄金~黄褐色~赤褐色~黒色 と次第に黒くなる。
ルチルにも黒っぽく見えるものや赤っぽく見えるものがあるのです。鉱物の世界では色で区別することはありません。
でもパワーストーンの世界では色が重要なので区別して呼んでいます。
黒く見えるのは「ブラックルチル」、赤っぽく見えるものは「レッドルチル」と呼ぶことが多いです。
いずれも茶色のものが黒っぽく見えたり赤っぽく見えたりするだけなので、真っ黒や真っ赤に見えるわけではありません。
“ミネラ No.19 2012年 10月号”,エスメディア,P40
ルチルじゃないルチルたち
でも、酸化チタンでないものでもルチルとして売っている店は多いです。「ルチルクオーツ(針水晶)は針状の結晶がインクルージョン(内包)された水晶のことです」と店のHPに書いたり、説明したりして売っている店は珍しくありません。
故意にやってるのか、無知でやっているのかは分かりませんが、それが間違いであることは、もうお分かりですね。
パワーストーン業界では「ルチル」は「針入り水晶」の流通名(商品を売るための名前)だとしてルチルを使うことがあたりまえのようにになっています。
だとしても、一般的なルチル(金紅石)ではないものが入っている。と説明するのが最低限の店の義務。それをしていない店もあります。
ブラックルチル・トルマリン
黒いルチルというのは貴重です。真っ黒に見えるほどのものは滅多にありません。「ブラックルチル」という名前で売られている多くのものは「トルマリン入り水晶」だったりします。
トルマリン入り水晶の黒はほぼ真っ黒といえるほど黒いです。
単純に「黒さ」だけならトルマリン入り水晶の方が黒いです。知らない人が見たらこちらの方が黒いので本物っぽく見えるかも知れません。
ブラックルチルという名のブレスレットが1000円とかで売られていたら、それはトルマリンの可能性が高いです。
いくつかの店を見てみると、トルマリンらしきものが入った水晶を「ブラックルチル」として売っているところがありますね。
もちろん。ちゃんと「トルマリン入り水晶」や「トルマリネーテッドクオーツ」として売っているところもあります。
トルマリン入り水晶が悪いわけではありません。トルマリンにはトルマリンのよさがあります。
色の「黒さ」を求めるならトルマリンの方が安価なわりに色が濃いのでコストパフォーマンスが高いです。
レッドルチル・アンフィボール
酸化チタンが赤みを帯びているものは、レッドルチルという名前がつけられていますが。最近では、酸化チタンではないレッドルチルも多く見られます。
しかも、酸化チタンではないレッドルチルの方が赤みが強くてきれいなことも多いです。
酸化チタンの赤は褐色なので。色を気にするなら他の石のほうがいいでしょう。
トルマリンやアンフィボール(角閃石)、ゲーサイト(針鉄鋼)が入っていることが多いです。
最近ではアンフィボールの名前で売られていることもあります。名前は分けたほうが混乱しなくていいですね。
ルチルじゃないけどグリーンルチル
グリーンルチルも人気があります。
ルチルは緑色になることはありません。本物がないので、ニセモノとすらいえません。
さすがにグリーンルチルを売る店には「ルチルが入っているのではない」と、ことわりを入れている店が多いですね。
緑の内包物は「トルマリン」か「アクチノライト(角閃石)」「エピドート(緑簾石)」です。これらの石もパワーストーン的には「癒し」や「リフレッシュ」などの意味を持たされているのでそのような目的で使うならよいと思います。
青みのつよい場合は「ブルールチル」の名前で売られていることもあります。
微妙な色の違いだけなので石としてはグリーンルチルとして売られているものと同じです。
「ルチル」という名前にだわらずに、色やデザインが気に入ったら使ってみるといいと思います。
でも、中には「緑の針入水晶はグリーンルチル」という乱暴な説明をする店もあります。
単に緑に濁った水晶をグリーンルチルとして売る店もあります。
角閃石の針状結晶が密集したものは「キャッツアイグリーンルチル」という名前で売られていることがあります。脱色したタイガーアイを緑に染めたものをその名前で売っていることがあります。
買うときは名前だけで選ばない
今では良識のある店はルチルという名前は使わなずに別の名前を付けて販売しています。
また商品としてはルチルという名前をつけていても、内包物一般的なルチルではない(酸化チタンではない)ことを説明している店もあります。
でも、いまだになんの説明もなくルチルの名前で売っている店もあります。
ルチル を買うときは、店がどんな説明をしているのか確認しましょう。
たかふみでした。
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