水晶には色々な種類があって楽しませてくれます。 中でもヒマラヤ水晶は高いパワーがあるとかで人気がありますね。 ヒマラヤ山脈という世界一高い山々が連なる特別な場所というのも人々をひきつける要素かもしれません。 でも、一口にヒマラヤ水晶といってもいくつかの種類があるんです。一般には採れる場所によって区別することが多いです。
ヒマラヤ水晶にもいくつかの個性がある
ヒマラヤ山脈は、ブータン、ネパール、インド、チベットにまたがる大きな山岳地帯です。ですから水晶が採れる場所もいくつかの国にまたがってます。いろいろ比べて産地によって個性が違うので自分のお気に入りを見つけるのも楽しみの一つです。
有名なのはネパールのカンチェンジェンガ、ガーネッシュヒマール産と、ネパール産になります。インドのクル、パールバティー産ですね。
今回紹介するのはインド・クル渓谷産ヒマラヤ水晶です。クル渓谷というのはインド北部のヒマチャル・ブラデッシュ州というところにあります。中心都市のクル(Kullu)の名前をとってクル渓谷と呼ばれるそうです。
西はパキスタン、北はチベットに接していてインドの北の端っこ、ヒマラヤ山脈の西の端っこになります。 クル渓谷産はヒマラヤ水晶の中ではわりとよく見かけます。マナリ産というのもみかけますが、マナリ(マナーリManali)はクル渓谷の北の方にある村の名前です。マナーリは避暑地としても有名らしいです。マナーリ産もクル渓谷産に含めていいと思います。
クル渓谷産ヒマラヤ水晶クラスター
水晶の生まれ育った土地に伝わる神々の話
クル渓谷一帯は昔から神聖な場所とされていてヒンズー教の寺院がいくつもあります。そればかりかヒンズー教以前からナーガ信仰、デヴィー信仰が盛んでした。今ではナーガやデヴィーはヒンズー教に取り入れられて神々の一員として扱われています。そのため、この地帯はナーガやデヴィーを奉るヒンズー教の寺院が多いのが特徴です。
石の話からはずれますがここで神々の話をしましょう。 聖地ヒマラヤを語るであればこの地に伝わる神々の話は避けて通れないと思います。 ナーガは邪神で地底の王でした。水を支配する神で雨、川、雲を操ることができます。農耕民族にとっては重要な神様です。ナーガはヒンズー教においても神として扱われ、脱皮を繰り返すことから不死の象徴として崇められています。さらには仏教に取り入れられて、仏を守る竜王となります。竜王も水や雨を操る力があるとされています。
デヴィーとは大地母神の事です。ヒンズー教にも多くの女神が登場しますがそれらは土着の女神を取り入れた結果個性豊かな女神が出来上がったと思われます。
ヒマーチャル地方の代表的な大地母神であるチャームンダー・デヴィーは、厳しい自然環境のせいか荒々しい女神であるとされています。盾と剣で武装し魔神からも恐れられたといわれています。死後の世界の王であるヤマ(仏教では閻魔天)の后とされています。
また、ヒンズー教におけるチャームンダーは戦いの女神ドゥルガーが魔神と戦うときに作り出した分身とされています。ですからドゥルガーと同一人物であるとも言われています。さらに、ドゥルガーはパールバティーの化身とされています。
ややこしいと思うかもしれませんが、ヒンズー教では同じ神が姿や名前を変えてさまざまなところに出て来るのが特徴です。とりわけシヴァとその后であるパールバティーは多くの化身を持っています。 チャームンダーもドゥルガーも戦いの女神という点では似ています。でもドゥルガーが美しさを併せ持つ強い女のイメージに対し、チャームンダーは不気味で怖い女のイメージで描かれる事が多いです。
さて、勘のいい人ならもう気づいたかも知れませんね。クル渓谷のお隣にあるパールバティー渓谷は昔からある大地母神がパールパティーと同じものとされたことからこの名前になったものだと思われます。
クル渓谷産の魅力
さて水晶の話に戻します。 クル渓谷産はカンチェンジェンガやパールバティー産のものに比べるとお値段もちょっと安めの事が多いです。ヒマラヤ産というとうっすらとピンクやオレンジ色がかっている物を思い浮かべる人もいるかと思いますが、それはインド側から採れる水晶の特徴でもあるのですね。クル渓谷産もうっすらとオレンジがかってます。それはこの土地の土が酸化鉄を含んでおり赤みを帯びた色をしているからだと思われます。
赤みのある結晶もあります クル渓谷産は他のヒマラヤ水晶に比べると安いと書きましたが、その原因のひとつが透明度の低さだと思います。画像をみてもわかるようにあまり透明感がなくてにごった色をしているものが多くあります。
「水晶は透明なもの」という印象からずれてしまうために敬遠する人もいるかもしれません。しかし透明度が低いとはいっても単に濁っているだけではありません。やわらかな優しい感じのする透明感です。
たしかに他の産地のものにはものすごく透明度の高い水晶はあります。でも、そういったものの中には冷たく硬い印象を受ける物もあります。そういった石は近寄りがたいものを感じるときもありますが、クル渓谷産なら気軽に手にとれそうなやさしい雰囲気があります。 それに神々の住む土地からやってきた水晶だと思うとちょっと神聖な気がします。
鉱物としての水晶を楽しむなら石の生まれた場所が神の住む土地だろうと関係ないかもしれません。精神的な部分を重要視するパワーストーンとして扱うのなら、水晶の生まれた土地の神話を知っているとまた違った楽しみ方が出来るかもしれません。 ヒマラヤ水晶にしては入手しやすく、やわらかな雰囲気を持つクル渓谷産はヒマラヤ水晶の入門用としてはうってつけだと思います。
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