天然物をこえる石がある

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パワーストーンとは似ているようで違う石のお話です。

先日新聞を見ていると、クレサンベールの記事が目に留まりました。

クレサンベール(CRESCENT VERT)  ご存知ですか?

別名イナモリストーンとも呼ばれます。

ジュエリーに詳しい人なら名前くらいは知っているかもしれません。

セラミック製品や太陽電池で有名な京セラが開発した「人工的に作られた宝石」です。

こう書くと天然石愛好家からは、人間が作った偽物と思われるかもしれません。

でも、成分や結晶構造は天然の宝石と同じ。いえ、むしろ天然石を上回る美しさと純度、傷のなさが特徴の天然石を超えた宝石です。

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なぜセラミック会社が宝石を作ったのか?

僕は京セラの本社に見学に行ったことがあって、展示室も見たことがあります。
京セラの本社は京都の城南宮という神社の近くにあって、京セラの展示室は一般人も見ることが出来ます。

そこで展示されていたイナモリストーンを見て、京セラは宝石を作っているのだと知りました。僕も化学者のはしくれですから宝石とセラミックの組成に似たところがあるのは知ってます。そのときは京セラはセラミックの製造技術があるからこういう事も可能なんだな、くらいにしか思っていませんでした。

でも新聞記事を見て、開発を思い立った京セラ創業者の稲盛氏(最近ではJALの再建に成功した人として有名)の 想いを知りました。 「天然の宝石は高価なわりに美しくない。それならば美しい石を自分で作ってしまおう」 「そして、安価で美しい宝石を人々に届けたい」 と、簡単に書けばこういう事です。

稲盛氏ひきいる京セラはエメラルド、ルビー、サファイア等の宝石を人工的に作る事に成功。 「クレサンベール」の名前で売り出しました。

京セラのwebカタログには、エメラルド、アレキサンドライト、ルビー、パパラチア、サファイア、ファイアオパール、ヴァイオレットサファイアがあります。

さらに、スタールビーやスターサファイアまで作ることが可能だということです。

クレサンベールはこう作られる

クレサンベールの作り方はこうです。

(1)まず原料を用意します。
 原料は宝石と同じ成分の原石を使います。化学的な成分は同じでも品質が悪くて装飾品として使えないものです。

(2)原石を粒状に砕きます。

(3)砕いた原石を1000℃以上の高温で融かします。(石によって温度は変わります)
 イメージとしては マグマ のようなかんじです。

(4)ドロドロになったものに、小さな宝石のかけらを入れます。
 このかけらを中心にして石が成長していきます。このかけらを種結晶といいます。

(5)ゆっくりゆっくり冷やします。すると石は固まろうとします。このとき種結晶がいると、種結晶のまわりから石が成長していきます。

(6)石が親指の頭くらいの大きさに成長したら取り出して、研磨します。
あとは、ふつうの宝石の加工と同じです。

こう書くと簡単に作れそうに思うかもしれませんが、人間が理想的な条件を用意しても思惑通りにきれいな石になるのはほんの少しだけ。全体の数%しか、売り物になる石はつくれないそうです。つまり、少しでもムラがあったり傷や不純物があったら不合格品として商品にはならないのです。日本企業お得意の徹底した品質管理のもとで作られているのですね。

現在でも日本企業の品質管理が批判されることはあります。中にはひどい会社もあるのは事実です。でも、全体的には日本企業の品質は高いです。企業で物つくりをしていると、さまざまな国の会社から材料を買って製品を作るのですが、外国のメーカーにはひどい品質のも多いです。それでも上からはコストダウンのために使いこなせと指示が出る。過剰なまでに高い品質の日本製の材料(もちろん値段は高い)を使えればどんなに楽か。と思うこともあります。話がそれてしまいました。

ともかく、クレサンベールはそこまでこだわらなくても少しくらい内包物があっても宝石にはなると思うのですが。商品として作る以上は、天然物をこえるものを作らないと意味がないという方針の元に行っているようです。

今や天然ものよりおいしい養殖うなぎが育てられる時代です。 なにもかも天然物が素晴らしくて、人が作ったものには価値がない。という考え方に常々疑問を抱いていた僕にとってクレサンベールの記事はちょっとした衝撃でした。

これは価値観に対する挑戦?

もちろん、人工的に作ったものを天然物として偽って売るのはいけません。詐欺です。

でも、京セラは自分達の技術で作った石としてブランドまで立ち上げて堂々と売っています。 そこには技術者の誇りと、ものづくりにかける熱意を感じました。

宝石を取り扱うプロの人が見ても、きれい過ぎるくらいきれいなのだそうです。
色の鮮やかさ、均一さ、内包物のなさ。本当に宝石なのか?と思うくらいクオリティが高いそうです。

僕も展示されているものは見ましたが、あまりにも鮮やかで均一すぎる色合いは本当に宝石?と思うくらいでした。

これと同じ品質のものが天然で作られたらとてつもなく高価なものになるでしょう。
それが天然の宝石とかわらないかちょっと安いくらいの価格で手に入る。
それを考えるとコストパフォーマンスは恐ろしく高い。といえます。

それにトリートメント処理がされていない分、天然物より優秀かもしれません。

天然の宝石にあってクレサンベールにないものは、ブランド力と、歴史的価値と自然界で作られたという価値でしょうか。

日本のセラミック会社が作ったので、まだまだ安い合成宝石と思われてる部分はあります。
もし同じ物がティファニーで作られたらもっと高い値段が付くでしょう。

僕も化学を専門とする技術者のはしくれなので、 こういうプロジェクトX的な話には弱くてついつい記事にしてしまいました(笑)。 天然物には天然物のよさがあります。 でも人が作ったものにはそれ相応のよさがあります。

なによりも美しさが求められるジュエリーと 精神的な要素の多いパワーストーンでは事情が違うのは確かです。

それすらアメリカで有名なヒーラーが「この石は凄い」と言えば、状況が変わるかもしれません。そんな事は絶対ないと思いますが。

でも、人の手が加わった石にもよいところはあるのに 偽物扱いされて価値の低いもののように扱われる石が不遇に思えて来ました。 パワーストーンと言っても、結局は扱うのは「人」です。

石の特徴を理解してうまく付き合えば、天然物だろうが、人の手が加わったものだろうが関係ないような気がします。 石を生かすのも殺すのも結局は人なんだと思うのです。

以上、たかふみでした。

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『天然物をこえる石がある』へのコメント

  1. 名前:しえる 投稿日:2016/06/07(火) 00:36:41 ID:75f5024e0 返信

    ちょうど、アレキサンドライトの天然物とクレサンベールのものと、どちらを購入しようかと、ものすごく悩んでいたときにこちらの記事に出会いました。
    天然物は、確かに地球という大自然に抱かれて育まれた分、パワーがいっぱい詰まっているという印象を受けますが、クオリティに不安があるという点で、なかなか決めかねておりましたが、クレサンベールも原料に宝石の原石を使用しているといういうのであれば、パワーという点では遜色がないとも言えるかもしれませんね。加えて、ムラや不純物がないように極めて高い品質管理のもとで作られているのであれば、記事に書いていらしたように、上質な物が入手できる分、クレサンベールの方がかなりお得感があるように思いました。
    私も随分と以前に京セラのクレサンベールの展示を見に行った記憶があり、そのときに説明を聞いて、実物を見て「クレサンベール宝石って、むしろ天然物よりいいかも。」と思った覚えもあったのですが、どこをどう受け取ってそう思っていたのか、今では記憶が曖昧だっただけに、こちらの記事は大変参考になりました。

    • 名前:たかふみ(管理人) 投稿日:2016/06/07(火) 06:50:49 ID:6eeeb03f3 返信

      しえるさん、こんにちは。おっしゃるとおりです。クレサンベールはクオリティの高さではかなりお得だと思います。石の価値はあつかう人しだいなんだと感じます。参考になればうれしいです。

  2. 名前:stardust                                    投稿日:2016/08/06(土) 14:49:51 ID:8c0a6f60a 返信

    よさは認めるが、稀少性はないね。
    人工宝石は、どんなに頑張ってもproductでああって、treasureではない。
    誰でも発注すれば納入されてくる、トイレットペーパーくらいの価値しかない。
    別に京セラさんが悪いわけではないが、自然の神秘というものに対する畏敬を軽く見ていると、残念な結果になるだろうな…
    NDKさんとかエプソンさんとか、合成水晶で産業に貢献したりしているのは、また別な次元の話。

    • 名前:たかふみ 投稿日:2016/08/06(土) 18:44:00 ID:1d844b287 返信

      stardustさん、こんにちは。そうですね。自然で作られた希少性を重視する方にとっては魅力はないかもしれませんね。希少性とは人間が作るもの。価値観は人それぞれ違いますから。品質、見た目のきれいさと、大自然の神秘はまたべつの判断基準なので、どちらを重視するかで評価も変わってくるでしょうね。